1980年代後半ごろの話である。
数日間便秘が続いてしっくりせず、薬屋に行った。
その程度の症状で行かなきゃ良かったと今でも後悔している。
田舎の薬屋さんは夫婦で接客してくれた。
今から考えるとかなり暇だったのだろう。
ところが、ぼくが、便秘薬がほしいと言うと、2人は顔を見合わせた。
つづけて、ぎょっとした顔になって、絶句した。
さらに、こちらを凝視した。
苦しみの時間が始まった。
「男の人が便秘になるわけない」
「病院で見てもらうべきだ」
「大腸がんではないか」
ほかの話は覚えていない。
というか、この3つのことがアタマにこびりついていて忘れられないと言うほうが正しい。
ガン告知でさえ一般的でなかった時代である。
それが、田舎の薬屋とはいえ、れっきとした医療機関(かな?)、それが言いすぎなら、少なくとも薬学部で医学を学んだ人(たぶん)が2人でこちらを攻めるのだ。
結局、体に優しいということで漢方薬をもらったように記憶しているが、ほかの事なんか何も覚えていない。
その後症状が改善したかどうかも覚えていない。
ただ、2人の薬剤師が絶句し、卒倒しそうな顔になり、
「大腸がんではないか」
とおそろしげな声で言ったことは生涯忘れられない。
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