低空ヴァイオリン-音程

音程が正確に取れない。
調子が悪いと(何が悪いのかは不明)、その日は、いつもより音程がずれたりする。
また、弾いているうちに、なんとなく、音程があってくる日もある。
しかし、特別な法則はなく、
弾いているうちに音程がずれてくる日もあるから問題は複雑だ。
とくに、ポジションが変わると、ずれも大きくなる。当然なのだろうが。

先生は「音程がずれているのがわかりますか?」という質問をすることがある。
ぼくは、こういうとき、ハタと考えてしまう。
答えるまで数秒かかることもある。
時間が止まってしまうのだ。

この質問には、正直、答えることはできない。
考えれば考えるほど、こたえることができなくなるのだ。

ぼくは、頭の中でいろんなシミュレーションをしてしまう。

ぼくが、音程のずれを認識していると答えたとしよう。
だとしたら、もっと、ちゃんと弾けるはずである。

ぼくが、音程のずれを認識できていないと答えたとしよう。
だとしたら、もっと、めちゃくちゃになっているはずである。

ぼくが、音程のずれを認識していると答えたとしよう。
相手は、プロである。
プロを相手に、”私は音程のずれを認識しています”などと断言できるはずがない。
だいいち、認識しているなら、もっと対策をとれるだろう。

ぼくが、音程のずれを認識していないと答えたとしよう。
それは、いくらなんでもまずい。
少なくとも楽器を弾こうとしているのである。
音程のずれがわかりません。と、答えるのは、
プロを前にした謙遜としてはオトナの答えなのかもしれないが、
いくらなんでも、そこまではいかない。

この問いに対して、
他人の音程のずれはわかるが、自分のはわからないと答えることもできるだろう。
どんなことでも、自分の失敗をうすめ、他人に責任をなすりつけるような言い逃れはいくらでもできるものだ。

「音程のずれがわかりますか」
この質問に対し、長考した後、ぼくの答えは、「わかるときもあるし、わからないときもある」だ。


「音程のずれがわかりますか」
おじさんヴァイオリン生徒に対するこの問いは、はっきり言って無意味である。